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五井野正博士の世界

国際評論家 五井野正氏に聞く

日本の闇社会が生み出したホリエモン事件 〜その3〜


 前回はライブドア株の株価操作の理由と高値で買って損失した被害者の為の損害賠償についてアドバイスを受けました。
 今回はニッポン放送株を乗っ取る時の株式市場の時間外取引を合法とした金融庁とその背景について聞いてみました。

ところで第一回目の話の続きになりますが、検察庁は昨年のニッポン放送株買占め事件の時から調査に入ったということですが。

 検察庁がライブドアの調査に入った理由は、ニッポン放送株の時間外取引の件です。金融庁は合法と言ってますが、その取引が何故行われたかとの点で疑問点が多すぎたからです。
 そこで先ず背景捜査の手順は違法な行為、あるいは合法と認められたとしても違法性のある行為に関して、どういう組織やどういう人物が関係していたかを探るわけです。
 そこで株式市場の時間外取引について少し説明しましょう。
 先ずニッポン放送株を含めて株式市場から資金を集めたり株式を公開して株を第三者に売買したい一流企業は東京証券取引所、一般に東証と言ってますが、ここに上場されて東証の会員である証券会社によって株の売買取引をするのです。そのときに売り手と買い手が値段と株数を提示して相方が折り合えば取引が成立して値段がつきます。
 株価の値段というのはこういう様な相対取引によって決まっていくのですが、ライブドアの場合、東証の取引時間外に村上ファンドから多量の株券を買ったのです。この時間外取引が違法なのか合法なのかが先ず問われました。


そういえば、そんな問題がありましたね。時間外取引と言うのは違法なんですか?

 それ自体は違法とか違法ではないとかと言う問題ではありません。つまり東証のモラルの問題ですから。問題は証券取引法の中で“TOB規制”と言うルールがあります。これは経営権取得の目的を持って市場外で株式を買いつけ、結果的に発行株式の三分の一以上を保有した場合はTOB(株式公開買い付け)の手段をとるように義務付けています。
 今回のライブドアのようにニッポン放送株を時間外取引で30%以上を取得した件は本来ならこの証券取引法でいう“TOB規制”に引っかかるはずですが、“市場外”と言う項目ではずれてしまったのです。
 つまりライブドアは時間外取引であるが、東証の売買システムを使ったから“市場内”取引とされてしまったのです。


すると先ず疑問が起きるのは何故、時間外取引と言う方法でニッポン放送の株をライブドアが多量に買ったのかということですね。

 それは先ず一に、東証が開いている時間にニッポン放送の株を多量に売買すれば皆がその株の売買を知ってすぐに乗っ取りだと勘ぐられたりして株価が急騰したり、株の買占め等を警戒されたりする。するとニッポン放送の株を更に買い増していく事が困難になる。
 二に、ニッポン放送側がこの時点で買い占められていると気がつくので対抗策を講じてくるため乗っ取りが難しくなる。つまり乗っ取りというのはバレた時点でアウトなんです。


なるほど、乗っ取りをし易くするために東証が閉まってから誰にもわからない様にしてニッポン放送の株を多量に売買したのですね。でも、これって東証市場が閉まってから売買したので市場外取引にあたるんじゃないですか?

 誰でもそう思うのは当然でしょう。私も市場が閉まってからの取引は実質上、市場外取引だと思います。例えばボクシングの試合があったとします。ゴングがなって試合終了になっても両者が打ち合いになって、一方がKOしたとします。レフリーはこれを正式な試合と認めるでしょうか?


認めませんね。

 そうでしょう。これはもはや試合ではなく乱闘ですよ。この試合をボクシング協会がそれでもリングの上で行われたから時間外試合として正式に認めたとすれば、これは全くおかしいでしょう。


ええ、そうですね。

 ですから、ましてや客が帰った後でこっそりとリングの上で試合が行われても、これはあくまでも練習試合であって公式試合と認めるのは全く不合理な話です。ところが証券取引所の場合、ライブドアの東証での時間外取引による経営権取得行為に対して東証を監督する金融庁は違法ではないとの判断だったのです。


変ですね。金融庁の考え方はなんでしょう。

 コメントがないので判りませんが、金融庁の合法の考え方をあえて推測すると例えばサッカーの試合やコンサートなどの人気試合などで“市場外”取引、つまりダフ屋行為は認めないが入場券売り場が閉まっていても関係者を通して買う、いわば関係者のダフ屋行為なら“市場内取引”の内と認めているということでしょう。
 それにしても、これだと切符を売り出す前に仲間内で一番良い席を独占してしまうことも可能で、これでは早く並んで待っている一般客を馬鹿にしている商売と言う気がしますね。つまり規則違反でなくてもモラル違反だと思います。いづれにしても時間外取引は公の取引とは違った例外的処置の取引に当ると考えます。


となれば、東証は例外的処置をすることによってライブドアのニッポン放送株経営権取得、悪く言えば会社乗っ取りに加担したことにもなりませんか?

 ええ、そういう点では東証と言うよりも金融庁の方がこのライブドア乗っ取り劇に深く加担したことになると思いますよ。
 さらに株をライブドアに多量に売った村上ファンドも東証の例外的処置を利用したのですからライブドアのニッポン放送乗っ取りに加担していたことにもなってしまうわけです。


しかしこんな新興の実体のない会社がニッポン放送、つまりフジテレビ、産経新聞グループの会社を意図も簡単に買収できるのでしょうか。

 実はこのライブドアの乗っ取りを仕掛けた人をよく知っているので、この事件の背景を私は良く把握しています。彼から聞いていた話とライブドアの実態や金融世界の仕組みなどを総合的に判断してこの事件を分析してみましょう。
 先ずライブドアがニッポン放送を買うには多額な資金が要ります。相手がニッポン放送?フジテレビー産経新聞グループですから、いくら儲かる話でも当然銀行は貸してくれませんし、投資する人も表ざたになるのを恐れて誰も投資しませんね。
 ですから、ライブドアに金を出したのはリーマン・ブラザーズと言う外資の会社になるわけです。証券会社ですから、お金を貸すのではなくライブドアの転換社債を引き受けるという形で800億円のお金をライブドアに投資したと聞いています。


転換社債とはどんなものなのでしょうか?

 転換社債というのは、ある値段でその会社の株と交換できる社債で、社債で持っている間は利息が付きます。しかし、その会社の株が上がって転換価格を上回れば株に転換してその株を売り、売った株の値段と転換価格の差の分だけ利益になります。
 ですからリーマン・ブラザーズはライブドアの株価が上がれば大きく儲かることになります。そうなると日本も含めて世界中の投資家はこの様な外資系の証券会社を通して転換社債を買えますから名前を表に出したくない人が投資するには便利な方法とも言えるでしょう。


なるほど、外国の大きな証券会社だと世界中からお金が集まるんですね。

 そうですね。国際金融資本というのは金融のノウハウをたくさん持っていますからね。
 そこでこの時間外取引にあたって事前にリーマン・ブラザーズは金融庁から違法ではないというお墨付きを取っていると関係者から聞いています。それゆえ東証もGOのサインを出したといえます。
 総じていえば、閉鎖的日本経済社会において東証が乗っ取りにGOサインを出したということは、この時間外取引を合法と認めた金融庁の動きが大きく影響したと考えられるわけで、その点では米国の意向どおり金融自由化を推し進める小泉政権と竹中大臣の影響力も無視しえない問題といえます。


それにしてもライブドアと言う新興の会社に何故こんな事が出来るのでしょうか。

 やはりこれもカラクリがあるのです。それは前々回にお話したと思いますが、政経会の忘年会にホリエモンを連れてきたA氏が実はこのリーマン・ブラザーズの顧問をしていると聞いています。
 顧問料なのか成功報酬料なのか判りませんが、数億から数十億の報酬を貰っていると関係者から聞きました。そしてA氏が経営権を持つ会社がホリエモンから億単位の顧問料を取っていたことや、毎年多額な金を政界に献金していることなど直接A氏から私は聞きました。ですから政界はA氏の言うことを良く聞くのです。


なるほど、ここにA氏を介してホリエモンと政界とリーマン・ブラザーズが結びついてくるのですね。

 ええ、背景がわかると簡単にこの事件が判ってくるのです。そこで先ずホリエモンと政界の問題を考えてみましょう。金融庁のドンは当時、竹中平蔵金融・経済財政担当大臣であり、そのボスは小泉総理大臣です。ですからニッポン放送乗っ取り劇の後の9月の衆議院選挙にホリエモンが選挙に出ますが、このときの竹中大臣の応援演説が「小泉、ホリエモン、竹中の三人でスクラム組んで」でしたね。何か今となってはホリエモンとの関係を示す灰色の迷文句に残ります。
 小泉首相も「新しい時代の息吹というかな、若い感覚をこれからの日本の経営に与えてくれるじゃないか」とホリエモンを改革の象徴の様にもちあげました。
 しかし、小泉首相も新興の一企業に何故これほど肩入れするのでしょう。つまり日本政府の長たるものがニッポン放送株買占め事件を引き起こした問題児の経営する一企業に深い思い入れするという事はモラル的にも問題になってしかるべきだと思いますね。まあ、小泉首相は邪魔者である亀井代議士の刺客としてホリエモンを送ったのですから、ホリエモンをヨイショするのは、それなりに理由があるかもしれませんが、竹中大臣はどうでしょう。
 むしろホリエモンにとって竹中大臣よりも武部幹事長のほうがホリエモンを選挙に担いだりズブズブの関係とも言われているし、また選挙のときにホリエモンのことを「私の弟であり、息子です」とまでヨイショした人ですから、やはり竹中大臣よりもホリエモンにとって大事な人は武部幹事長でしょう。だから「小泉、ホリエモン、武部でスクラム組んで」と言ったほうが一般的にはわかりやすいんですがね。何故竹中大臣までがホリエモンを一生懸命ヨイショするのか疑問に思いませんか。ここがホリエモン事件の深い霧なのです。


              
五井野 正 (ごいの ただし) 科学者・芸術家
ウィッピー総合研究所 所長 / ロシア国立芸術アカデミー名誉正会員
スペイン王立薬学アカデミー会員 / アルメニア国立科学アカデミー会員
フランス芸術文化勲章受章
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