原発による環境及び人的影響J
問題原発を推進した政府・自公の責任逃れ
「検証」メルトダウンの過程
原発事故の原因は津波でなく地震
(前号より)
と言うのも、中央制御室でデータ採取をしていた作業員が放射線量が高くなったので簡易性のマスクをして13日まで作業。その間に678ミリシーベルト(内部被爆590ミリシーベルト)の被爆をしていた事が後にわかったからだ。
何故なら、毎時150マイクロシーベルトの外部被爆ならそこに24時間いた場合の被爆量の計算は
150(μsv)×24(h)=3600(μsv)=3.6(msv)
となって1日当たりたったの3.6ミリシーベルトにしかならないからだ。つまり、二日間まるっきり中央制御室にいたとしても7.2ミリシーベルトにしかならないから外部被爆678ミリシーベルトという数字と比較すると二桁も低い数字となってしまうからである。
12日午前5時44分に菅首相が半径10q圏内の住民に避難指示。同6時には1号機の圧力容器が破損して燃料がすべて溶け落ちる。同8時04分に菅首相がヘリで原発に向け出発。
東京電力が「ベント」の実施を政府に通報したのは、菅首相の視察終了の同8時半で、作業着手は同9時04分。空気圧縮ボンベの不調などで時間を費やして実際に排出が行われたのは同14時30分だったと言うが・・・。
その間の8時39分?13時30分の間に、南相馬市、浪江町、大熊町の大気から、核燃料の損傷を示す放射性物質が検出されていた。そして、正午には東電の清水社長が1号機の海水注入を決定していた。
同14時30分過ぎにベントで格納容器の圧力低下を確認すると、枝野官房長官は1号機のベント後に、「放出はただちに健康に影響を及ぼすものではない」と発言し、20q圏のみの避難指示を変更しなかった。
同14時53分に真水がなくなり、1号機の真水注入が停止。そして、1号機の場合、「ベント」開始と言われた時間から約1時間後の同15時36分に水素爆発で同機建屋の天壁が吹き飛んだ。
このように、地震が起きてから水素爆発するまでの1号機の経緯を探ってみると、事故の一番の原因は地震であったことがわかる。つまり、地震によって原子炉内の配管が壊れ、冷却水が噴出して、放射能を周囲に拡散するだけでなく、圧力容器の冷却水を失ってメルトダウンしたことが時間の流れの中で誰にでも容易に理解されるはずだ。
さらに言えば、冷却用の電源があっても冷却水が漏れてなくなってしまえば、イタズラに放射性汚染水を拡散するだけになり、少しでも電源が止まったり冷却水の補充ができなくなれば、すぐにでもメルトダウンすることになる。
東京電力は事故の原因を全て想定外の津波に負わした
ところが、東京電力は「地震の後に来た津波が2002年に想定した5.7mを超える未曽有の大津波だ」として事故の原因を全て想定外の津波に負わしたのである。
しかしながら、津波に関して言えば、三陸沖地震で千人以上の死者を出した869年の貞観津波が古文書に書かれていることが今回の大震災前から指摘されており、また1500年ごろに東北から関東を巨大津波が襲った痕跡を産総研のチームが見つけて政府にも震災後に知らされ、原子力安全・保安院は「今後、当然検討する」と答えていたのである。
しかも、4月27日の衆議院経済産業委員会で吉井共産党議員の質問に原子力安全・保安院長は倒壊した受電鉄塔が津波の及ばなかった場所にあったことを認め、電源喪失の要因の半分は地震による損壊であることを明らかにしていた。
それゆえ、想定外と言うよりは想定内の地震で事故が起き、放射能物質が周囲に拡散してしまった事実を何とか隠したかったというのがどうやら真相のようである。
と言うのも、前述した武田邦彦著『原発事故残留汚染の危険性』の22ページ目に、
「地震が起こってから一時間ぐらい経ったときに、ある配管は破損して、そこから水がこぼれだすなど、作業員はその回復作業に右往左往していたと考えられます。津波が来たのがどのタイミングであるか判断が難しいのですが、現在まで公開された資料を見てみますと、津波が来る寸前に電源の全ては落ちていたように考えられます。そのために有効な手段が取れない状態の中、津波がやってきます」
と記述されていることからも、津波よりも地震によって福島原発事故が起きたと考えられるからである。
そして、武田氏は「日本の原発が震度6で壊れる」という事実を突きつけて、武田氏が2006年4月に内閣府原子力安全委員会の専門委員として、原発の耐震指針を決める基準部会に出席をしていた時に東大の某名誉教授によって「新しい耐震指針」が提案されたと書き、その中で、「地震の専門家が将来の地震の大きさを間違うこともあるが、それは現在の科学では仕方が無いことであり、それによって発生するリスクを”残余のリスク“と言う」と、説明がなされたと記述している。
そして、武田氏は、実は日本の原発は「地震が来たら壊れて、放射性物質が漏れ、場合によっては付近住民が被曝する」という「指針」のもとに作られていますと、結論付けているのだ。
つまり、政府の内閣府は原発地で震度6を超える地震は想定外という指針の下で原子力発電を認めていたという事実がこの本で暴露されていることになる。
悪いことをした政府・自民・公明両党が先ずすることはSPEEDIの情報を隠すという結論
となると、震度6強で外部電源が止まり、原子炉の配管が壊れて放射性汚染水が漏れ、作業員が被曝したり、原子力発電所の周囲にも放射性物質をばら撒いたという事実は当然、政府、内閣府の責任となり、悪いことをしてしまったという自覚からSPEEDIの公表をためらったというのが実状だろう。
もちろん、このような指針で原子力発電を許可していたのは菅内閣というよりは自民党と公明党の連立政権時代であるから、野党となっている自民・公明両党は自分たちの責任を恐れて国会での菅内閣への責任は及び腰になっていると考えられる。
となると、「悪いことをした政府・自民・公明党が先ずすることはSPEEDIの情報を隠す」という結論になる。だから民主・自民・公明党が連立を組んで都合の悪いことを早く隠したいという本音がここに見えてくるのだ。
とすれば、それによってメルトダウンが起きたことを、政府・自民・公明党がどうしても隠さなければならないことになる。それは、後述する自民党の石原伸晃幹事長の本音のぼやき言葉で証明される。
そして、メルトダウンについては既にあおぽ757号に今日の福島原発事故の事態の深刻さを予期して警告している。しかも、3月11日の東日本大震災があったその日の内に書いているので、その時の掲載原稿をそのまま再度記載する。
原稿を出そうとした3月11日、東北・関東大震災が起きた。…(中略)
編集長に電話をかけて、この重大ニュースに関してページをさきたいので原稿の遅れを承知してもらった。
その日の夜、地震や津波の大災害が次々と放送されると、原稿そっちのけでテレビに食い入ってしまった。そのような状況の中で福島第一原発の1号炉の水位が下がっているというニュースが流れた時に、即座にチェルノブイリ原子炉事故と同じようなメルトダウンと爆発による原子炉建物の崩壊が起きると感じ、すぐに周辺の知人に避難することと、これからの放射能対策を講じた。
と言うのも、原子炉の中の水位が下がるというのは、原子炉内部にある燃料棒がまだ熱を多量に放出しているということと、原子炉を冷やすための緊急炉心冷却装置が正常に働いていないという二重の大きな問題を引き起こしているということを意味している。チェルノブイリ事故はこの2つの事故によって爆発、そしてメルトダウンを起こしている。…(中略)
(次号へ続く)