秋田県発!秋田のフリーペーパー【あおぽ(青いポスト21)】|「あおぽ」は秋田市内のほぼ全戸にポスティング。さらにチラシの選別配布ができ、的を絞った情報発信が可能です!魅力的なトピックスとともに、地域の企業・店舗・教室・求人情報などを載せており、高いレスポンス実績があります。秋田県ネットユーザーアンケートのフリーペーパー部門にて第一位の連覇実績。一番多くの方に読まれています!
五井野正博士の世界

原発による環境及び人的影響M

メルトダウンは東電も官邸も事故当初から知っていた

被曝量の実際
放射性汚染水は戦争に使用すると毒ガスよりもひどい兵器となる

 もちろん、微量のヒ素を毎日飲んだだけでも皮膚炎を起こし、脊髄損傷から末梢性神経炎、腎不全などを起こすだけでなく、ガンになって亡くなる例が多い。有名なところでは宮崎県の旧松尾鉱山や1970年代に起きた宮崎県高千穂町土呂久でのヒ素公害事件がある。
 同じようにして放射線の場合、成人が250レム/年(年あたり2500ミリシーベルト)以上を内部被曝したらほぼ死亡すると言われていることから1時間に1ミリシーベルトの放射線を105日以上内部被曝しただけで死亡することになる。
 それゆえ、ヒ素の場合と同じく体重が軽い、つまり子ども程、もっと少ない量で放射線の影響を大きく受けるだけでなく細胞分裂が活発なので遺伝子の損傷による奇形、奇病、ガン化が生じてくる。
 つまり、放射線もヒ素の中毒と同じように生体内でラジカル酸素を発生させて皮膚炎や神経炎などを引き起こし、さらに身体を老化させて様々な病気を発生させる、ついにはガンの発生を引き起こすのである。
 さらに、レントゲン撮影よりも放射線量の多いCTスキャンは1回あたり6・9ミリシーベルトと言われているが、米国のある研究では2007年度中に米国内で行われたCTスキャンによって今後3万人近くの人がガンに誘発されるだろうとの警告もある。
 しかも、実際にはガンだけではなく放射線によるラジカル酸素効果によって多くの人が皮膚炎や老化現象、免疫力の低下による様々な病気が誘発されるのだ。それゆえ、1msv/hの放射線を浴びる場所にいるということは、6・9時間ごとに1回CTスキャンが、あるいは1日に40回強制的に胃のレントゲン撮影が行われるということである。そして、一般人になじみの胸部X線撮影だと1日に480回近くレントゲン撮影する事になる。
 この基本的イメージがまずわかってくると、福島第一原発の周辺や建物内ではその1000倍の毎時1000ミリシーベルト(1000msv/h)の放射性汚染水(いわば放射性毒水)があり、それに触っただけでも、あるいは近くに寄っただけでも猛毒のヒ素水を飲んだのと同じなのだとしたら、その毒水が原発の敷地に10万トンも貯められ、毎日増量していると考えたら、どれ程ひどい状況かがわかってくるだろう。
 ところが、6月4日に東電がその4倍の毎時4000ミリシーベルト(4000msv/h)の湯気が1号機の原子炉建屋内の配管付近から噴出していると発表したのである。
 1時間そこにいるだけで半数が死に至るから、被服に少しでも濡れてそのままにいれば、その内に死ぬことになる。これを戦争に使えば毒ガスよりもひどい兵器となる。これは、前述した1号機の配管から出ていたのと同じ水蒸気なのである。
 恐らく格納容器の底にメルトダウンした核燃料のうえに冠水した水が熱せられて水蒸気となって配管から出てきたのだろうと思われる。思われるというよりもそれしかないと言った方が良いと思うが、あまりにも学者や政府、東電がメルトダウンしていないと国民に洗脳してきたから解からないだけである。そこで、先ずその洗脳を解くことから始めなければならない。


最初の地震で原子炉の配管に穴があき、放射性物質が多量に漏れた事を
細野原発相に指摘

 まず、メルトダウンについては2、3号機のタービン建屋地下のたまり水から核燃料が溶けた時に出るテクネチウムなどの放射性物質が検出されたことから、保安院は4月18日に福島第一原発1〜3号機で原子炉内の核燃料の溶融が起きていたとの見解をまとめて原子力安全委員会に報告している。原発事故から1ヵ月以上もたってからやっと報告されているのである。
 そして、安全委の班目春樹委員長は同じ日の会見で「圧力容器の底に小さな穴が開き、溶けた燃料の一部が格納容器内に流れこんでいる可能性がある」と指摘した。
 しかしながら、”可能性がある“という曖昧な発表ではハッキリとした事実結果にはならない。これではさらに調査を進めるという時間稼ぎだけであって政府の緊急対策にはならない。
 そこで、ついに私が5月19日の政治家との朝食会において、細野豪志首相補佐官(原発事故担当大臣)に、「福島原発の軽水炉は冷却機能が喪失すれば6時間後には炉心溶融(メルトダウン)になることは製造元がすでに東電に伝えているはずだし、専門家なら常識的な見解だ」と述べた。
 しかも、核燃料は圧力容器から格納容器に落ちて格納容器にも穴を開けている。そこに放水しても汚染水を敷地内に垂れ流すだけ。放水作業など現場の作業員は東京電力の下請けや、その孫請け、さらにその下の人たちで放射能の危険性も何も知らされずに作業している。
 ひどい環境の中で高度の放射線被曝をして労働条件も悪く、早く改善させてやってほしい、と要望した。
 さらに、最初の地震で原子炉の配管が壊れて穴が開き、放射性物質が多量に漏れたと指摘したのである。この指摘に対し、細野豪志氏は非常に驚いた表情で慌てて私に挨拶も忘れて会場を去ったのである。
 その結果と言うべきか、5日後の5月24日になって初めて東電は、1号機に続いて2号機、3号機のメルトダウンや格納容器に穴が開いていたことを認め、5月25日の各紙の朝刊で大きなニュースになった。
 もっとも、私はこのことを自慢話で述べたのではない。真実を話しても理解してもらうのが時として難しく、へたをすれば海千山千のホラ話に受け止められてしまうから、いつも重大な真実は腹の中に貯めておくしかない。


誤った見解が先に流れてしまうと公式発表以外の正しい推論や論評は
信憑性が疑われてしまう

 話を戻すと、メルトダウンしたことは私が指摘するほどでもなく、専門家なら、イヤ東電も官邸も事故の最初から当然知っていた事実である。それを”燃料棒が損傷した可能性がある“と遠まわしに発表してきたのをマスコミが掘り下げて国民に知らせてこなかっただけなのである。
 例えば、大手新聞の3月13日の朝刊では「経済産業省原子力安全・保安院は12日夜の記者会見で今回の事故について〈暫定的にはレベル4〉との見方を示した」と報道し、3月16日の朝刊では「東京電力は15日、東日本巨大地震で被災した福島第一原子力発電所(福島県)の1、2号機について、原子炉内の核燃料がそれぞれ7割、3割の破損を受けている恐れがあるとの試算結果をまとめ、福島県災害対策本部に報告した」とある。
 この報道を信じた多くの学者たちが福島第一原発の1号機から3号機が早い段階でメルトダウン(燃料棒がかなり溶けて下に落ちる状況)からメルトスルー(圧力容器の底を溶かし破って、さらに格納容器の底も破ってどんどん下に落ちていく状況)になっていたにもかかわらず、東電や保安院の情報に惑わされて炉心溶融は25%から70%と考えて、チェルノブイリ事故よりは1ケタも2ケタも低い事故と誤ったメッセージを国民に送ってしまったのである。
 それゆえ、誤った見解が先にマスコミを通して流されてしまったため、メルトダウンしたことがハッキリとした公式データや政府の発表でないと、事故の大きさは憶測の範疇を超えられず、結局、どんな正しい推論や論評も信憑性が疑われてしまうのだ。
 仮に悪いことをした奴らがデータを隠していたことが後にバレたとしても、データの信憑性を確かめてから発表する予定だったとか、統計処理が遅くなったとか、データの不備な点を補充するのに手間がかかったとか、様々な言い訳で責任逃れできてしまう。
 そこで、私は福島第一原発事故の大きさをチェルノブイリ原発事故と同じレベル7と書き、あおぽ(第757号)で秋田市民にいち早く真実をお知らせした。その結果というか、あおぽ掲載一週間後に政府は結局原発事故の大きさをチェルノブイリ事故と同じレベル7と修正し、国民に発表したのである。それゆえ、あおぽは多くの政界幹部達に読まれているというからその影響力は大手新聞に引けを取らないと言えるだろう。


(次号へ続く)

              
五井野 正 (ごいの ただし) 科学者・芸術家
ウィッピー総合研究所 所長 / ロシア国立芸術アカデミー名誉正会員
スペイン王立薬学アカデミー会員 / アルメニア国立科学アカデミー会員
フランス芸術文化勲章受章
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