原発による環境及び人的影響O
時間と共に問題が起き、複雑化している福島原発
核燃料の再処理や放射性汚染物質の処理方法は現在の科学では不可能
実際にはロシア政府から除去プラントの建設も含めて1トンあたり10万円以下という提示があったせいか、東電は契約から50日たった5月27日に1トンあたり21万円で来年1月中旬までの増加汚染水(15トン)を含めて約531億円の金額になることを、ここにきて発表した。
東電が払うにしても結局は電気料金に上乗せするのだから、国民が払うのと一緒である。となれば、払う側の国民にとって処理代1トン21万円よりは10万円以下の方がいいに決まっている。しかしながら、ことは放射能処理であり、日本人の生活や命に関わる問題であるから価格よりも安全・安心の技術や管理の方が大事であろう。
そこで、仏アレバ社の放射能技術はと考えてみると、ちょうどNHK‐BSで「放射性廃棄物はどこへ『終わらない悪夢』」が放送されていた。なんと、その映像には仏アレバ社の再処理施設から伸びたパイプが放射性廃液を海中に流している場面が映っているではないか!
アレバ社の「ラ・アーグ使用済核燃料再処理工場」からパイプを敷設し、1・7q沖の海域に毎日放射性廃液を排出しているのだ。それと言うのも、1993年に国際条約によって放射性廃棄物の海洋投棄は全面禁止されたが、それはあくまで船や飛行機などからの投棄のことであって、陸上からの排出は未だ規制されていないからだという。
となると、福島第一原発事故後の4月初旬に2号機から高濃度汚染水が520トン(4700兆ベクレル)、5月11日に3号機から250トン(20兆ベクレル)の汚染水垂れ流しはアレバ社に習って国際的にもセーフと言うのだろうか?それならば、政府がアレバ社と手を組む理由がわかる。それにしても、民事上の損害賠償まで逃れるものではないだろう。
再処理後の使用済ウランやその他の放射性物質はロシア・シベリアの「トムスク7」(セベルスク)という名の濃縮施設に輸送されている。しかしながら大半が処理されないでそのままコンテナに入れられて野ざらし状態になっているのだ。
つまり、この処理方法を悪いというよりも、核燃料の再処理や放射性汚染物質の処理方法は現在の科学では不可能なのだ。
3号機はすでにメルトアウトの状態、冷却水はやがて地下水を放射能で汚染していく
現実に汚染水処理についても政府や東電の期待とは裏腹に、福島第一原発の放射能汚染処理システムは専門家の指摘通り、運転開始からトラブル続きに見舞われた。予定の50%しか処理できず、そのため高濃度汚染水は減少するどころか、かえって増加して12万トンになってしまった。その放射線総量は約80京(兆の一万倍)ベクレルと、チェルノブイリ原発事故で放出された放射性物質の15%前後に当たる程の量である。
と言っても、どれ程の放射線量だかわからないであろう。そこで、だいぶ前に述べたのでお忘れになった方もいらっしゃると思うが、チェルノブイリ原発事故で放出された放射線の量は広島原爆の500個分相当と専門家に指摘されている事を思い出してください。
すると、福島原発にある汚染水だけでも広島原爆75発分の放射性物質が溜まっているという事になる。その死の水の近くで、今も作業員たちが必死に働いているのだ。
そういう中で8月8日の朝日新聞の一面に「震災10日後、『炉心溶融』」という見出しが載ったのである。つまり、3月21日に福島第一原発3号機が再溶融して格納容器も溶かし、核燃料がコンクリートの中に沈み込んだと旧日本原子力研究所の研究主幹の研究が大きなニュースで取り上げられたのである。
ということは、メルトダウンどころか、核燃料が圧力容器を破って格納容器に落ちたメルトスルーから、さらに格納容器を破ってその下のコンクリートに落ちたメルトアウトの状態に3号機がなっているということになる。となれば、いくら放水しても冷却水は地下にしみ込んでやがて地下水を放射能でどんどん汚染していくことになる。
福島原発がメルトスルーしていることは、私が早い段階で指摘していた事であり、現場の作業員はこの事実を知れば「それでは俺達は命をかけて今まで何をしていたんだろう」と思うだろう。
当然、収束に向けた冷却工程表は大きく狂うだけでなく、汚染した地下水が海や周辺の地域に流れないように早急に地中壁を建設しなければならない。その大工事には1,000億円位の金がまたかかるだろう。
つまり、福島原発は未だに大事故中であり、問題が少しずつ時間と共に解決されるどころか、かえって時間と共に新たな問題が起きて複雑化しているし、政治も混乱して大事故の処理の解決をより一層困難にさせている。
あおぽ読者に正しい情報を伝えるため原発に関連する資料を集め読み続ける日々
今では日本全体が放射性物質によって土壌汚染され、食物や水、空気からの放射性物質の日毎の内部被爆が積み重なって健康被害がどんどん加速されているのに国民が様々な情報に惑わされて、政府や自治体に何をまかせ、何を期待したらいいのか、また、何を信じ、誰を信じていいのか全く何が何だかわからなくなってきてしまったと言えよう。
そのような、「あおぽ」の読者に対し、私は出来る限り、東電や保安院、原子力村の学者の説に惑わされず、正しい情報をお伝えしようと、原発問題に関する資料を集め、科学的に証明していくような段取りを考えていく中で日課的に毎日、五大新聞と二大夕刊紙と毎週出る週刊誌、さらには原子力に関する特集号や日刊雑誌、多量の書籍とさらには毎日のように送られてくるネットの記事を義務的に読んでいる。これが毎日重なると、さすがに私の頭も精神も人々に対する思いも、集中力も何もかもが資料を読みあさる頃にはダウンしてしまうのである。
と言っても、具体的に例を挙げて説明しなければ、何故そこまでして毎日資料を読まなければならないのかがわからないと思うので、最近話題になったニュース、例えば、原発を再開するか、しないかの大きな問題で経産省と菅首相が対立し、その妥協の中でストレステストの安全基準が作成された事と牛肉のセシウム汚染が発覚した日、2011年7月12日の朝刊に掲載された原発関連の記事を具体例としてここに追加補足してみたいと思います。
まず、発行部数の一番多い読売新聞の7月12日朝刊(写真1)の一面記事のトップは「原発安全2段階で評価」という大見出しで次に「政府統一見解、1次で再稼動判断」という見出し文字がそれに続く。
本来見出し文字だけでだいたいの概容がわかるものだが、この言葉では専門家以外は難しいだろう。
(次号へ続く)