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五井野正博士の世界

放射線災害の歴史と現状C

ガンマ線は強い電磁波、脳に及ぼす影響は強い

福島原発事故によって今後50年間、200q圏内の住民が避難せず定住を続けた場合の予測

 すなわち、県民の健康を心配しているのではなく、県民を研究対象の被験者として、つまり放射線量による人体の影響を調査する研究材料としての人間モルモットのように見ていると思われても仕方のない発言なのである。
 そうなると、日本政府や福島県の自治体は一体、福島県民のために何が出来、何をしようとしているのだろうか?
 ちなみに福島原発事故によって今後50年間に200q圏内の住民が避難せず定住を続けるとICRP(国際放射線量防護委員会)は6000人余りの住民がガンになると予測している。それに対し、欧州放射線リスク委員会(ECRR)では41万6000人余りとしているのである。
 ECRRのクリストファー・バズビー科学議長は、「内部被爆の影響は、外部被ばくの600倍に及ぶ。ICRPに20年間籍を置いたジャック・バランタイン博士は退職後、内部被爆のICRPの計算は900倍も過小評価していると証言しているのです」と述べ、さらに、「ABCCが設置された頃は、米ソ間で核戦争が起きる可能性があった時代でした。核兵器の場合、内部被ばくは(殺傷効果として)すぐの効力としては問題にならなかった。放射性物質の降下の影響を認めると、約50qという広範囲に及ぶため、無制限に広い範囲の人間に危害を加える兵器を使ってはならないとする国際人道法に違反する。このため、(内部被ばくを)無視する政策をとり、日本政府も従ってきた」と述べている。
 そこで、広島や長崎に原爆が落とされた事による二次的被害、つまり、放射能の内部被ばくに関し、米軍の情報コントロール化された知識だけを鵜呑みにして実際の放射線病理医学に無知と思われる学者や政府関係者のために、25年前に起きたチェルノブイリ原発事故の科学的なデータに基づく実状をあげてみよう。


子どもたちは大人たちよりも 数倍、場合によっては数十倍も内部被ばくの影響を受けやすい

ウクライナのチェルノブイリで原発事故が起きたことをソ連以外の国でいち早く知った国はスウェーデンで、1986年4月28日早朝、スウェーデン南部のフォルスマルク原発で環境放射線モニターに異常な放射能が検出されたことがきっかけとなってスウェーデン政府がソ連政府に問い合わせてわかったものである。
 そして、チェルノブイリ4号炉で起きた核爆発の放射能雲は1200キロ以上も離れたスウェーデンにも届き、4月28日から29日にかけてスウェーデンに降った雨は1万2000?に1平方m当り37kBq(3万7千ベクレル)以上のセシウム137の汚染を引き起こした。
 そこで、スウェーデン・リンコピング大学病院の公衆衛生疫学トンデルらのグループは、汚染地域におけるガンとの関係性の疫学調査を行った。まず、スウェーデン放射線防護局が作成したセシウム137の汚染地図から6つの汚染レベルに区分した。  そして、そこに住む114 万3182人の固定追跡調査が行われ、2万2409件のガン発生と汚染との関係が調べられた。(表1)
 長期に記された「相対リスク」とは、最低汚染レベル(<3kBq/u)でのガン発生率を1として、他の汚染レベルでの発生率を比較した値である。表1では、汚染レベルとともにガン発生の相対リスクが次第に大きくなる傾向が確認されるだろう。 (表1)  この調査で10万ベクレル/uの放射能降下量でガンの発生率が11%高まったことがわかり、この10万ベクレル/uでの土壌汚染がもたらす年間の被ばく量はたったの3・4ミリシーベルトとなる。 となると、福島県民の子どもたちが年間20ミリシーベルトの土壌汚染地にこれからずっと住まされることを考えるとこれから子どもたちに一体、何が起きるのか想像しただけでも恐ろしくなる。  しかも、子どもたちは大人たちよりも数倍、場合によっては数十倍も内部被ばくの影響を受けると言われているから、まさに福島県の年間20ミリシーベルトの基準は子どもたちを誤ってジェノサイド(大量虐殺)の世界に導いてしまう可能性が出てくるのだ。それを防止し、警告するようなデータが中立国であり科学的信頼のおけるスウェーデンで発表されたのである。  外部被ばくだけを対象にしたICRPのガンのリスク係数では1シーベルトで5%だからトンデルらのグループが調査したデータと比較すると611倍の違いが生じる。結局、外部被ばくだけをリスクとするICRPの予測はこの例からも実態とあまりにもかけ離れていると言えよう。  また、最近同じくスウェーデンで発表された論文によると、スウェーデンの56万人の児童を調査して、チェルノブイリ事故の時に妊娠8週間から25週間目の胎児であった児童にIQおよび学力の低下が見られたという。  その度合いは放射性物質の汚染度と比例するという結果になっていた。脳の神経系は胎児期の時から発達する事から、胎児期に放射線の障害を最も受けやすいという事がこの調査からもわかったのである。  となれば、スウェーデンよりもはるかに汚染がひどい福島県の子ども達はこれからどんな症状を引き起こすのかが想像できよう。

原発事故以来、福島県のみならず 首都圏でも子どもたちの 身体に異常が次々と起きている

 このような事実を知り、福島県の放射能土壌汚染や汚染農産物の問題解決は国や東電の責任と保障によるもので、国民の問題にすり替えられるものではないという認識を強く持てば”福島県民のために福島産の食べ物を食べよう“とテレビ番組の中で主張し、実践したフジテレビの大塚キャスターが放射線障害特有の急性リンパ性白血病で入院したことや芥川賞作家である柳美里がブログの中で子供には食べさせないが自分は福島産を食べると宣言した結果、拷問のような激痛が起き、あらゆる薬も効かないため、苦痛で叫び続けているという事態に陥らなかったであろう。
 原発事故以来、福島県のみならず首都圏で子ども達が下痢や腹痛、喉の痛み、リンパの異常、突然の鼻血など、身体の異常が次々と起き、母親たちが心配して医者に見せても治らない、あるいは原因不明という事で結局は放射線の影響と考えて子どもを西日本に疎開させている状況も生まれたし、現実に皆さん方も3月11日以降に記憶力が悪くなった、あるいはついさっきまでの事を忘れてしまったとか言う体験もないでしょうか?そんな馬鹿な!と放射線ではなく年のせいだろうと思う人もいるでしょう。  しかし、携帯電話などの電磁波で記憶力が少し落ちたと言う問題ならご存知だろう。そこで、対策として携帯電話を耳に当てないでイヤホンで聞くという方法をとる人も数多くいるわけである。
 となれば、ガンマ線はもっと強い電磁波だから脳に強く影響を及ぼす事は当然考えられるはずである。なのに学者や批評家と称する人たちは何故、放射能の問題となると身体に影響のない量であるとか、放射線の影響として考えられない、あるいは風評被害だと叫んだり、馬鹿な発言をしたりするようになるのだろう。
 今、考えれば戦後時の学者や医者、そして、政府やマスコミは本来なら人道的見地で被ばく者に対して、人間的な同情を持たなければいけないのに、なんと非情かつ弱者に対する人権侵害を平気で犯す輩達と思えてくるだろう。
 しかしながら、原爆被害が起きてから66年も経って今もまた、今回の福島原発事故の放射能被ばく災害においても福島県民に対し、政府や県、学者や批評家たちがとった行動を見ると当時の状況と何も変わっていないと思えるのである。

(次号へ続く)

              
五井野 正 (ごいの ただし) 科学者・芸術家
ウィッピー総合研究所 所長 / ロシア国立芸術アカデミー名誉正会員
スペイン王立薬学アカデミー会員 / アルメニア国立科学アカデミー会員
フランス芸術文化勲章受章
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