ちょっとしたブレイクタイム37
異常気象と人口削減A
・先週号は戦前のアメリカで劣性民族として2番目に日本人が指名されていたことに驚きましたが、今週もこの続きを聞きたいと思います。ドイツではヒトラーによって優生学的な考え方が推し進められましたね。(ハイ)それがユダヤ人の虐殺に繋がっていった訳ですね。
「そうです。ヒトラーはドイツ人はアーリア人の末裔であると優生学的な優越感をドイツ国民に与えて世界統一を考えました。
ところで、優生学というのは歴史的にはダーウィンの従兄であるフランシス・ゴルドンがマルサスの主張する最下層民の人口削減を“unfit”(生存に適さない)と考えて人工的に人口削減を推し進め、1883年にユージェニクスという学問用語を造ったのが翻訳されて”優生学“という学問用語となったのです。」
・そうなんだ。ユージェニクスという言葉が日本語で“優生学”という言葉になったのですね。
「そうです。この思想がアメリカに伝わり、次にドイツに伝わってヒトラーの下で民族断種に繋がっていくのです。初めは人種差別での断種ではなく知的障害者などのレッテルを張られた人たちが強制的に断種をさせられました。」
・対象者はどのくらいの数になりましたか?
「40万人近くと言われています。ところが第二次世界大戦になると断種から抹殺に近い状態になってきます。」
・へえ、怖いですね。どういう方法が取られたのですか?
「病院では手当と称して毒物などを混入して殺害、もしくは安楽死させられたのです。この方法が最終的には皆さんも知っているようにユダヤ人や同性愛者、結核患者さんたちにも適用されたのです。」
・有名なヒトラーのユダヤ人虐殺ですね。その虐殺の背景には優生学という考え方があったのですね。
「そうです。戦後はこのような考え方はユダヤ人虐殺というイメージと相まって表面上からは立ち去りましたが、水面下ではまだ生きているのです。」
・まだ生きているのですか?怖い話ですね。日本人は劣性民族なんでしょう!
「そうです。ですから表面上は先進国でも人種差別は無いようですが、支配階級の人達の中には白人、黒人、黄色人種という順で差別化している思想が根強く残っていることに注意して欲しいです。
と言うのも、今の日本は経済大国になっているから一応、欧米人は日本人をそれなりに評価してくれていますが、かつてはナチスとの同盟国という敵国関係ですから嫌悪感情がまだ歴史的に残っていると思います。
私が40年前にヨーロッパに行った頃は世界で最も醜い人種は日本人とホッテントッドだと言われた位ですから。」
・ホッテントッドとは?
「アフリカの原住民の一部族の名前ですが、コイコイ人とも呼ばれています。かつて白人による人種差別の強い南アフリカ共和国で人種差別の対象となっていました。1905年頃にドイツ支配から抜け出すために、部族は一斉蜂起しましたがドイツ軍に虐殺されたという悲劇が残っています。」
・そうですか。そんな話を聞くと白人世界のひどい差別用語の気がしますね。ホッテントッドに同情しますね。
「しかし、下手な同情は禁物です。と言うのも、日本人は弱者に対して同情的な気持ちを持つやさしい民族ですが、その分薄情な欧米社会からは誤解を受けやすいのです。それに白人社会では黄色人種は黒人よりも下に見られていますが、その黄色人の中でも日本人が特に嫌われています。
だから、外交問題では日本人はアジア人や黒人を優越感的な視線で見ますが、白人社会から見たら逆の立場で、それゆえに傲慢な民族と思われてしまいます。それでなくても日本人の場合は国際感覚が無くて、村意識の塊のようですから誤解される面が非常に多いので、イエスかノーかをハッキリと意志表示をしてから自分の主張をしていくことが大事ですね。嫌われないように相手に変な気の使い方をするより、既に偏見から嫌われているのですから国際人感覚で話をしていくといいですよ。」
・そうですか。政治家や外交官はそういう事をキチンと理解して外交して欲しいですね。しかし、日本人がそのような差別的評価を受けているというのは悲しいですね。
「そうです。しかし、多くは偏見や誤解から来るものですから国際的な貢献と努力が必要です。」
・となると、日本は金持ちの国だから、もっと貧しい国に金銭的な援助をしたらどうでしょうか?
「そういう努力も必要ですが、金銭的な援助だけではだめです。金銭的援助の社会福祉というのは社会主義的な考え方であって、資本主義社会ではあまり評価されません。資本主義が発達すると、何が評価されると思いますか?」
・何でしょう。わかりません。
「文化や芸術です。歴史を見て下さい。資本主義の人達は最終的には王侯貴族のような暮らしをしたいのです。例えば、金持ちになるとまず、美食や美飲など、食事や飲み物などの質を高めていきますが、さらに金持ちになると高級車やヨット、自家用飛行機、豪華な家と次々とあくなき欲望によって買いあさっていきますね。
しかし、どんなに贅沢品を買ってもどんどん質も価値も劣化していきます。そこで、さらに金持ちになると、今度は安定した財産家になってゆき、そこで永久なる価値と質と品格を持つ財産を求めるようになります。そうなると、最後は高価な工芸品から芸術品へと向かうようになります。」
・そうなんだ。そこまでいかないと本当の金持ちと言われないんだ。
「そうですよ。ところが、お金がいくらあっても本物の芸術はなかなか手に入れられませんね。特に歴史的な絵画は人間の質と品性や精神を高めてくれますが、価値は万民の宝として美術館に収まって個人の手には入りません。」
・芸術というのは個人的な価値でなく万民の価値なんだ。
「そう。ですから、絵画で言えば、今日において万民の価値の絵画というとレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、レンブラントと言った巨匠たちの絵画ですが、これも白人社会の価値基準で決められたものですね。
ところが、白人社会だけでなく、東洋と西欧を結びつけた絵画と言えば線画によって描かれた明るい色彩と大胆な構図のインプレッション(印象派と和訳されてきたが正しくは浮世絵)絵画が19世紀に生まれました。
マネとかモネ、ルノアール、ゴッホ、セザンヌといった人たちの絵画のことです。日本の浮世絵の影響を受けた近代絵画です。」
・ここで浮世絵が出てくるのですね。
「そうです。浮世絵こそ日本が誇れる世界の絵画ですし、芸術・文化なのです。ですから、浮世絵外交が日本を本当に評価してもらえるし、日本が浮世絵を通して西欧に大きな文化を与えてくれたと歴史的に見直してくれるのです。
そういう意味で江戸時代の浮世絵が、つまり江戸時代の文化が今日の日本を本当に救ってくれる役目を果たしてくれるのです。」