「原発ゼロ」は可能
注目される秋田のシェールガス発電@
9月初めに政府が発表する将来のエネルギー政策の指針が注目されている。2030年時点における日本の電源構成はどうあるべきか。野田内閣としての方針が示されるからだ。日本は「3.11フクシマ」事故により、「反原発、脱原発」世論が大きな高まりとなって最近は10万人越の全国規模の集会が開かれたり、毎週金曜日恒例になった首相官邸前デモには全国から参加者が集まってくる。昨年9月に発足した民主党・野田政権も事故進行中とあって、政府の方向性として「脱原発」を揚げてきた。ただ事故の行方も定まらない昨年末、早々と「収束宣言」したり、関西電力大飯原発に代表される原発再稼働問題には、「反対世論」が沸騰する中で再稼働を決定するなど、その原発政策はいまひとつハッキリしない。電源としての原発をどうするか、野田内閣の方針が今回示されるが、政治のリーダーシップにより「原発に依存しない日本」の実現は決して難しくはない。そこで注目されるのが秋田県でのガス田開発など新しいエネルギー源の行方だ。
経済省主導の国家戦略室
政府は内閣官房の国家戦略室にエネルギー・環境会議を設け、将来の電力調達をどうするか、広く国民の声を聞こうという趣旨で全国各地で意見聴収会や討論会を催してきた。そこで議論の叩き台として提示したのが、2030年時点での電源構成について原発比率「0%、15%、20〜25%」の三案だ。原発は使用済み燃料をはじめ膨大な核廃棄物を生み出し、その管理には気の遠くなるような時間と経費がかかる。しかもチェルノブイリやフクシマのような大事故を起こせば世界中が永遠に放射能禍にさらされる。原発をなくすのが望ましいのは自明のことだ。
しかし、あえて先のような三つの選択肢を提示したところに、腰の定まらない政府の姿勢が見て取れる。すなわち「0%」はあくまでも一案であり、本音はどのような比率にするかはともかく、原発を一定の比率で維持していくことを狙っているのではないか。それというのも今回の意見聴取会や討論会など一連のイベントは、経産省や広告代理店に委託して進めてきたものだ。当然ではあったが、初期の意見聴収会では電力会社社員による声高な原発推進の「ヤラセ」的発言があいついで批判が噴出した。そこで回を重ねてグループによる討論会形式に移ると、電力社員の口を封じる一方、先の三択に問われない自由な意見表明の場に変えた。米国の大学で研究された手法を取り入れたというが、一つの世論誘導、世論形成のための手続きではないか。
それというのも今回の国民世論を聴くという大イベント、建て前は先のように国家戦略室が主導しているもので、実際に実行委員会も組織されている。しかし、それはあくまでも表面上の話であり、実際にすべて取り仕切っているのはエネルギー政策の元締めである経産省だ。古川元久国家戦略室担当大臣はいわば表の看板にすぎない。
周知のように日本に54基もの原発を立地してきたのは、経産省に代表される政府と電力会社の二人三脚だった。それによって政官財学のいわゆる原発マフィア、原発ムラが形成され、それが招いた結果がフクシマだった。今や国民大多数が「原発ゼロ」を志向しているにも関わらず、彼ら原発ムラ住民が既得権益を簡単に手放すはずがない。一連のイベントによって「議論を尽くした」としつつ、一定の比率で原発を維持する結論を出して政府方針にする可能性が高い。
しあkし、このところ石油メジャーが利益を大幅に減らす一方、代表的原子炉メーカーの米GE社の会長が原発からの撤退をも示唆し始めたのは、新しいガスの供給量が急速に増えてきたからだ。無論、シェールガス開発にも克服すべき課題はあるが、(株)石油資源開発などが始める秋田県や新潟県での開発の行方が注目される。