「資源大国日本」の一角を担う秋田県
シェールガスに続いてメタンハイドレードも有望
日本をはじめとする世界各国が中国に全面依存していたレアアースが、小笠原諸島東方の南鳥島近海で発見されたのは資源小国日本に一大朗報だった。それに続いて今度は三重県沖でのメタンハイドレート掘削試験に成功した。メタンハイドレートは古くから日本近海に埋蔵されていると見られてきたが、世界に先駆けて海から掘り出すのに成功したのは昨年のシェールガス試掘開始に続く朗報。秋田県から島根県まで日本海側10府県による海洋エネルギー資源の開発促進にも拍車がかかっている。
独立行政法人・海洋研究開発機構と東大の研究チームは今年1月、南鳥島沖の海底の泥から世界最高濃度のレアアースを採取した。レアアースはハイテク製品に欠かせない希少元素で、世界的に需要の9割を供給しているのが中国だった。そのため2010年の尖閣諸島問題で中国が日本への輸出を制限し、産業界が打撃を受けて大騒ぎになったのは記憶に新しい。それが日本の排他的経済水域(EEZ)から産出される可能性が生まれ、しかも中国産の10倍の高品質とあって、少なくともレアアース問題でこれから中国に振り回される恐れはなくなる。
そして3月12日、独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構は、愛知、三重両県にわたる海底のメタンハイドレートからメタンガスの試験採掘に成功した。
メタンハイドレートは「燃える氷」と呼ばれているように、天然ガスの主成分メタンと水が深海の海底のような低温高圧の下でシャーベット状になっているもので、火を点けると燃える。存在そのものは古くから知られ、将来のエネルギー源として有望視されていたものの、採掘技術の難しさから本格的な調査や採掘への取り組みが始まったのは近年になってからだ。とくに日本近海は世界有数のメタンハイドレートの宝庫とされ、中国が尖閣諸島の、韓国が竹島のそれぞれ領有権を主張するのは、漁場拡大だけではなく海底資源を視野に入れているからだ。現実に尖閣沖の日中中間線海域では、日本は中国と共同開発するはずのガス田開発を中国に先行されたままであり、韓国は日本海でのメタンハイドレート開発に着手しているとみられる。
これまで日本近海で埋蔵されているのが確認、または調査によって有望視されている海域は、太平洋側が北海道の十勝沖、そして先の愛知県から紀伊半島、四国、九州に至るいわゆる南海トラフ沿いだ。一方、日本海側は秋田、山形沖から新潟、石川、京都を経て島根までの10府県に及ぶ。太平洋から日本海、さらに網走などオホーツク海側でも確認されており、それらすべてを合わせた埋蔵量は、日本の現在のガス消費量のおよそ100年分に相当するとされる。
しかし、問題は費用対効果(コストパフォーマンス)だ。すでに着手されている秋田県でのシェールガス・オイルも南鳥島でのレアアースも、生産コストに見合った資源として利用できるか否かはこれからの課題だ。資源開発はすべて市場価格との兼ね合いが鍵となるが、開発技術が進歩するほどにコストも下がる。メタンハイドレートも存在が確認されていながら開発が進まなかったのは、輸入する石油、ガスに対して開発コストが高過ぎるとしてあくまでも研究、試験段階に止まっていたからだ。それが愛知、三重沖の試掘に成功したのは、「減圧法」という日本が開発した新技術の結果である。
経済産業省資源エネルギー庁は、今年中にも生産コストを試算して3年後には商業生産の見通しを立てる方針。政府が本腰を上げる気になったのもやはり「3・11フクシマ」による。事故は国策としての無謀な原発推進が招いた結果であり、再生エネルギーや代替エネルギーの開発に手を抜いてきた結果でもある。大きな犠牲を払ってやっと本気になったということだが、商業ベースに乗るまでにはまだまだ時間はかかる。
そこで日本海側の10府県は昨年9月に京都府知事を会長とする「海洋エネルギー資源開発促進日本海連合」を設立、資源エネルギー庁に日本海側でも本格的な調査や試掘に向けた取り組みを要請してきた。その結果、独立行政法人・産業技術総合研究所が中心になって今後3年間を目途に埋蔵量や生産コストの見通しを出す。シェールガス、メタンハイドレートともに輸入に頼る従来の石油、ガスを補完する日本にとっての貴重な戦略資源であり、秋田県は重要なその一角となる。開発技術の革新的な進歩を期待したい。
(了)